こんにちは!ユウです。
第1種放射線取扱主任者を保有しています。
放射能分析をやっていた頃に放射能分析で定量下限を下げるのはどのようにすればよいのか?と質問されることがありました。
今回は、放射能分析で定量下限値を下げる方法を紹介します。
定量下限値を下げる要素
放射能分析で定量下限値を下げる要素は3つあります。
その3つは、感度、量、時間です。
感度
分析装置の性能である感度によって、定量下限値は異なります。
もちろん、感度が高いほど定量下限値が低いです。(感度以外同条件の場合)
Ge半導体検出器の場合は相対感度の数字が大きいほど感度が高いことを示しています。
既に手元に検出器がある場合は、買い換える必要があるため、これから下限値を下げたい場合は最終手段となります。
同じ機械なら同じ感度?
ここから余談ですが、
同じメーカーの同じ機械を購入したからといってまったく同じ感度ではありません。
理由は、効率40%の検出器だとするとメーカーは40%以上の感度が出た検出器に機種名を割り当てるからです。
製造する過程上、まったく同じ感度の検出器を製造できないのです。
量
放射能分析では、U8容器やマリネリ容器を使用しますがマリネリの方が定量下限値が低くなります。
それは、U8容器に比べて試料の量が多くなるからです。
U8容器の場合は約80グラムですが、マリネリの場合は2000グラム入れることができます。
相対感度40%,1000秒測定の場合、
U8は20Bq/kg、マリネリは1Bq/kgほどの定量下限値となります。
このように、試料量を増やすことで定量下限値を下げることができます。
時間
測定時間を延ばせば伸ばすほど放射能の定量下限値を下げることができます。
ただし、時間が長くなればなるほど下限値の下げ幅は少なくなります。
24時間ぐらいを最長として分析することが多いです。
逆に最低時間は、計数誤差や統計の関係上1000秒としていることが多いです。
定量下限値を下げる具体的な方法
前項で定量下限値を下げる要素を説明しました。
ここからは具体的にどのようにして定量下限値を下げるかを紹介します。
例えば、マリネリで24時間測定したけどもっと下限値を下げたい場合です。
感度については機械の特性なので無理
時間は24時間以上測ってもそこまで下限値が下がらない
マリネリは2LがMAXなのでこれ以上入れられない
という状態です。
ここで、できることは濃縮して量を増やすことです。
加熱濃縮
液体、水分を含むの試料について有効な方法です。
乾燥機やヒーターを用いて検体に含まれる水分を飛ばすことで体積を少なくすることができます。
更に、濃縮したい場合には後述の灰化して濃縮する方法が有効です。
液体については加熱濃縮法は大量の濃縮に向いていません。
大量の液体を濃縮したい場合は後述の固液抽出法が有効です。
灰化して濃縮する
農作物や食品など、加熱して灰化することで体積を減らせる試料について有効です。
灰化すると放射能も飛ぶのではと思う方もいますが、セシウムについては約400℃以上で加熱しなければ揮発することはありません。
乾燥させた後に、300℃程度で灰化することで濃縮が可能です。
体積がかなり減る為分析する際にはU8容器を使用するケースが多いです。
固液抽出
大量の海水や河川水などを放射能を集める物質を使って濃縮する方法です。
セシウムの場合は、リンモリブデン酸アンモニウムを使用します。
海水や河川水を大きなバケツに入れてそこにリンモリブデン酸アンモニウムを添加して攪拌します。
時間がたった後、上澄みの水を捨ててそこにたまったリンモリブデン酸アンモニウムを回収します。
回収後は、ヒーターなどで加熱して水分を飛ばしてU8容器などで測定を行います。
この方法は、文部科学省の測定法マニュアルにも記載があるのでご確認ください。
・感度の良い機械を使用する
・測定時間を長くする
・濃縮など前処理をして試料の量を多くする