こんにちは!ユウです。
環境計量士(濃度)の資格を保有しています。
分析を行っていると定量下限についてはどうしても理解しなければならない内容です。
ネットで調べても難しく書いてあることが多く、なかなか理解できない方も多いと思います。
この記事では、初心者向けにややこしいことは除いてわかりやすく最短で定量下限値について説明します。
定量下限の種類
厳密には定量下限値の種類と表現するとあまり良くないと声がかかるかもしれませんが、この記事ではわかりやすくするためにあえてこの様な表現をします。
大きく分けると4つの定量下限値の考え方があります。
分析機器の定量下限値
分析法の定量下限値
実測の定量下限値
検量線上の定量下限値
一般的にこれらの定量下限値はどれを示しているかわからないことが多いです。
分析機器の定量下限値
分析機器でブランクと検量線の最低濃度によって評価される定量下限値です。
一般には、ブランクと検量線の最低濃度を複数回分析して標準偏差の3倍が検出下限値、10倍が定量下限値となります。
ブランクと検量線の定量下限値をそれぞれ評価して高い方の定量下限値を採用します。
あくまでも、機器上の定量下限なので前処理操作がある場合には後述の実測の定量下限値を用いることが多いです。
また、機器の出力値のシグナルとノイズの比であるS/N比で評価される場合もあります。
S/N比の場合は、10以上あれば十分な感度があると言えます。
分析法の定量下限値
JISや環境庁告示などに記載された定量下限値のことです。
試験法に準拠した分析を行えば記載された定量下限値が得られるという単純な定量下限値です。
実測の定量下限値
前処理と機器での分析を含めて評価された定量下限値です。
ほとんどの分析は前処理操作を含むので実測の定量下限値を計算する必要があります。
ブランクとブランクに検量線の最低濃度を添加した検体を前処理して複数回分析して評価します。
前出にある通り、標準偏差の3倍が検出下限値で10倍が定量下限値となります。
ブランクと添加した検体をそれぞれ評価して高い方の定量下限値を採用します。
計算の例
検量線上の定量下限値
検量線のブランクを除いた一番下の濃度を定量下限値とする考え方です。
検量線が引けていない濃度範囲は定量できているとは言えないので検量線を用いない一部の分析法を除いて必須となります。
検量線は相関係数で評価されることが多いですが、実際は、直線性があり、低濃度に関しては想定している濃度になっていることが必要となります。
実測の定量下限値と検量線上の定量下限値のどちらか大きい方を定量下限値とするのが一般的です。
定量下限値の決め方
定量下限値をそのまま採用する
前項により求められた定量下限値をそのまま定量下限値とする方法です。
実験や研究などで使用されることが多いです。
数値を処理する場合は切り上げで処理して定量下限値を担保することが必要があります。
一定の数値を定量下限値とする
便宜上、基準値などと比較する場合は基準の10分の1ぐらいを定量下限値とすることがあります。
定期的な測定、排水や環境水など基準と対比する場合はこの方法を用いることが多いです。
計算などによって求めた定量下限値よりも高い定量下限値のみ設定することができます。
例えば、計算した定量下限値が0.0001mg/L、基準が0.01mg/Lだとすると
基準の10分の1の0.001mg/Lを定量下限値として報告します。
上記の場合、計算した下限値0.0001mg/L以下の定量下限値にすることはできません。
・定量下限値の求め方は1つではない。
・一般的に実測の定量下限値と検量線上の定量下限値を比べて高い方の定量下限値とする。
・便宜上、上記の定量下限値より高い定量下限値にすることが可能