こんにちは!ユウです。
第1種放射線取扱主任者保有しています。
放射能の分析を依頼された方で、定量下限値が毎回異なることについて聞かれることが多いです。
どういうことかというと、
同じ検体でも先月測定した結果が、定量下限値15Bq/kgだったとすると今月は18Bq/kgだったりします。
放射能測定の業界では当たり前の話で分析上問題ないのですが、疑問に思っている方も多いようです。
この記事では、誰でもわかりやすいように簡単に毎回の下限値が違う理由を説明します。
http://yu-minotake.com/wp/housyanou-kagenwosageru/2491/
定量下限値が毎回異なる主な理由
放射能は確率の世界
放射能を分析するためには、放射能から出る放射線を測定しています。
放射能と放射線についてはこちらで詳しく紹介しています。
http://yu-minotake.com/wp/ri-housyanouhousyasen/509/
実は、放射能から放射線が出るのは確率となっています。
例えば、放出確率60%の100Bqの放射能があるとすると1秒間に60本の放射線が出ています。(注意:1崩壊で1本の放射線が出る場合)
しかしながら、数字上では決まった数値なのですが、現実的には少し違ってきます。
4個のはずれがあって6個のあたりがあるくじを引いたくじを戻しながら100回引くとちょうど60回のあたりが引けるかどうかと同じことです。
定量下限値は、実際のくじ引きのように引いてみないとわからない部分があるため測定ごとに定量下限値が異なってしまうのです。
自然の放射線が邪魔する
放射能分析では、検体から放出される放射線を測定するのですが、測定中に邪魔をする放射線があります。
それは、宇宙から降り注ぐ宇宙線や地面に含まれた天然の放射能から発生される放射線です。
自然放射線についてはこちらでも触れています。
http://yu-minotake.com/wp/ri-syokuhin/578/
この放射線は、常に一定ではなく変動しているため測定するたびに結果へ与える影響が異なります。
放射能分析では、毎回補正を行うため補正の度合いによって定量下限値が異なってしまいます。
前処理(作業者)による違い
放射能分析は、プラスチック容器に隙間なく均一に検体を詰め込んで分析を行います。
アズワン マリネリ容器 2.0L φ170×190mm 1個 [3-6592-03]
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このプラスチックに詰めるときにどうしても分析ごとに差が出ます。
検体を詰めるときは、容器の一定の高さまで詰めるため作業員の違いによっても差が生まれます。
分析結果は、放射能(Bq)を試料量kg)で割って計算するため同じ検体でも試料量が異なると定量下限値が異なります。
どうしても放射能の定量下限値を揃えたい場合は?
基本的には、測定ごとに異なる定量下限値を報告する分析機関が多いです。
ただし、そんな分析機関でも通常報告する様式ではなく、別紙で定量下限を揃えて欲しいとお願いすると対応してくれる機関が多いです。
この場合は、『実測の下限値<揃えたい下限値』である必要があります。
依頼するときに、求めたい定量が検知がある場合には事前に分析機関へ伝えることが必要になります。
放射能を少なく見せる方法
知識のない一般の方へ結果を出す場合には定量下限値を高くして放射能の分析結果を低く見せる裏技があります。
たとえば、前項の定量下限値を揃える場合は、放射能が18Bq/kg(定量下限値15Bq/kg)検出された場合、定量下限値を20Bq/kgと設定すると「不検出」とすることができます。
一般に基準値の10分の1までは許されることが多いですが、不検出に見せたい場合にはこの方法を使用する場合もあります。
http://yu-minotake.com/wp/housyanou-kagenwosageru/2491/
http://yu-minotake.com/wp/bunseki-teiryoukagenwokimeru/1523/